EMSと美容効果

EMSと美容効果

EMSとは「Electrical Muscle Stimulation」の頭文字を取ったもので、電気刺激を与え、筋肉を強制的に動かすことで、怪我や病気などで筋肉が弱った箇所に使う医療用の治療機器に用いられていました。
最近は、家庭用のEMSも数多く販売され、ダイエットやトレーニングや美容などにも使用されるようになりました。そのEMSと美容効果を特集しています。

日本語で表記するなら「電気的筋肉刺激」という事になります。
筋肉には微弱の電流が流れていますが、EMSは体内に電気を通して、その刺激で意識的に筋肉を動かすものです。
つまり電気の力で自分の意思にかかわらず筋肉を動かすことができるのです。

 

EMSの歴史

医療用として使用されていたEMSですが、古代ローマでは、病気治療のため電気ウナギを利用していたとの記録が残っているそうです。
1791年、イタリアの医師で物理学者のLuigi Galvani(ルイージ・ガルヴァーニ)は、電気信号が筋収縮を引き起こすことを発見しました。
1800年代には、電気信号による筋収縮の原理が科学的に確立されたようです。

 

実は諸説ありますが、EMSは1960年代のヨーロッパで開発されました。注目を浴びたのは、1972年のミュヘンオリンピックがきっかけでとの事です。
旧ソ連(現ロシア)選手たちが、筋肉増強に効果を出し、好成績を収めて以来注目が集まりました。
1973年にカナダの生理学者が旧ソ連(現ロシア)を訪れ、その理由が筋肉への電気刺激によるトレーニングの成果だという事が判明して、1977年にこの研究の発表(ソビエト.モスクワ.スポーツアカデミーの医師Kotsは、数週間の電気刺激に基づくトレーニングにより、筋力が20%以上増加することを報告した。)があり、EMSの研究がカナダやアメリカを始め世界に広がって行きました。

 

日本でも研究されており、京都大学名誉教授 森谷氏は自身のEMS研究について発表しました。
森谷氏は、EMSのトレーニング効果について40年以上研究を行っています。
現在、その論文は世界各国の研究者の注目を集めています。

 

EMSは、医療現場でリハビリや痛みの軽減を目的として使われ、やがて、EMSで「筋肉を刺激する」ことの美容効果が見いだされ、現在では、美顔器などの美容機器にもEMSが活用されるようになってきているのです。

EMSの美容エビデンス

医療用やトレーニングとしてEMSのエビデンス(科学的根拠)は多々ありますが、美容に関してはどうなのでしょうか?
2019年の論文発表では、家庭用EMSローラー美顔器によりシワ・肌状態の改善効果が報告されています。
以下が内容です。

目的:家庭用 EMS 美顔器家庭用 EMS ローラー美顔器「WAVY mini」と通電用ゲルを用い,マッサージを併用した際の美容効果の検証を目的とした。

 

方法:35 歳以上 59 歳以下でシワグレード 1-3,肌の乾燥やたるみを感じている女性を対象として試験を実施した。
試験品「WAVY mini」を通電用ゲル「ボディスムージングゲル」を用い,マッサージを併用しながら,1 週間に 3 回,4 週間継続して使用した。主要アウトカムは,シワ(目尻シワグレード・大きさ・深さ),肌弾力,顔のサイズ(縦・耳下腺位置の顔幅・珠点位置の顔幅・エラ長・髪生際~頬骨下),顔の角度(顎角度・エラ角度)を評価した。
副次アウトカムとして,被験者自身の肌状態の評価と,安全性評価を実施した。

 

結果:21 人で試験を開始した。全員が 4 週後まで完遂し,21 人を解析対象とした。
使用前との比較では,シワは,目尻のシワグレードは 4 週後に有意に改善し,シワの大きさ・深さは使用直後と 4 週後に有意に改善した。肌弾力は,使用直後に有意に改善した。顔のサイズは,耳下腺位置の顔幅・珠点位置の顔幅・エラ長・髪生際~頬骨下が使用直後と 4 週後に有意に減少した。
顔の角度は,顎角度・エラ角度のいずれも使用直後と 4 週後に有意に改善した。
不使用側との比較では,目尻のシワグレードは 4 週後,シワの大きさ・深さ・髪生際~頬骨下・顎角度・エラ角度は使用直後と 4 週後に有意な差がみられた。
肌状態の評価は,使用前との比較では全 12 項目中,11 項目(潤い・たるみ・キメ明るさ等)が有意に改善し,不使用側との比較では 10 項目で有意な差がみられた。
また,4 週間の試験期間中に有害事象は発生せず,試験品の安全性が確認された。

※参考:家庭用 EMS ローラー美顔器を用いたマッサージ併用による美容効果
※この論文は、美容機器メーカーのヤーマン株式会社が財政支援しており、日本臨床試験協会と日本橋エムズクリニックの研究者が共著者となっています。

EMSの美容効果(メリット)

それでは、EMSの美容効果(メリット)について述べてみたいと思います。

顔の筋肉が収縮することでリフトアップや小顔などの効果が期待できる。

EMS美顔器は、自分では動かしにくい筋肉をピンポイントに刺激を与えることも可能です。
顔の筋肉は自分の意志で動かしにくい筋肉の1つと言われおり、衰えた表情筋も鍛える事で、たるんだ筋肉を引き締める効果が期待できます。

シワやほうれい線などに対しての効果が期待できる。

EMSの電気刺激は肌の真皮層に働きかけて、コラーゲンやエラスチンの生成を促進する効果もあると言われています。

EMSのデメリット

肌荒れやニキビ跡の修復、顔のクスミなどの美白効果は薄いとされています。

EMS美顔器は 顔の筋肉を強制的に刺激して表情筋を鍛えるものです。
また、長時間の使用は筋肉が疲れることになり、かえって逆効果になります。適度な時間で使用するのがベストですので、必ず使用目安時間を守って使用しましょう。
それから、火傷や水ぶくれの箇所や傷のある部分の使用は、悪化させてしまうケースもあるとの事ですので、避けて使いましょう。

即効性のある劇的なリフトアップや小顔効果は望めない。

個人差はありますが、即効性を感じにくいようです。「効果がない」と直ぐに諦めずに継続した使用が大事だと思います。少しずつ効果を感じる時がくると思いますので気長に使いましょう。

最後に(まとめ)

顔用EMSには「家庭用」と「業務用」の2種類があり、家庭用の顔用EMSは低周波が採用されているものが多く、業務用のEMSは高周波が採用されていることが多いのが特徴です。
また、「マスク&ベルト」タイプの顔用EMSや「目元」タイプの顔用EMSや「多機能美顔器」タイプの顔用EMSなど様々な商品が開発され販売されています。
それぞれ使用する場合、記載されている注意事項を守り、焦らず使いこなしましょう。

 

※参考
家庭用EMSと業務用EMSで最も大きな違いは周波数(ヘルツ)です。
電気は波で表現されますが、ヘルツ(Hz)とは1秒に何回この波が起きるかを表します。
周波数帯は低周波・中周波・高周波の3つに分類されます。

 

低周波・・・0,1Hz~1,000Hz
中周波・・・1,000Hz~10,000Hz
高周波・・・10,000Hz以上

 

周波数が高ければ高いほど体の奥深くまで電気を流すことが可能ですが、筋肉運動を起こしやすいのは20Hz~100Hzくらいの低周波と言われています。